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第三話① 白鳥棗

Author: 三木猫
last update Last Updated: 2025-11-07 11:09:04

あの誘拐未遂から、一週間後。

私の名前は「佐藤美鈴」から「白鳥美鈴」になっていた。

…イケメン恐ろし過ぎる。なんなの、この手際の良さ。

誘拐事件の翌日、誠パパと鴇お兄ちゃんが家に訊ねてきた。その手に婚姻届をもって。

私は自室で鴇お兄ちゃんとお喋りしていたけど、大人組はずっとリビングでイチャイチャしつつこれからの事を色々話していた。

そして、更にその翌日には新居に引っ越し。どゆこと…?

新居は物凄くでかい、所謂豪邸ってやつで。

元々白鳥家で所有していて、売ろうかどうしようか悩んでいた物件だったらしい。

とは言え、こうして住む分には何の問題もない。って言うか全然人がいなかったとは思えない綺麗に保たれてるんだけど。

これだったら私達親子が暮らしていた新築マンションの方がボロいわ。

ふと、一緒に住むならパパの家かママの家でも良かったのでは?とも思ったけど、誠パパの家は誠パパの奥さんと白鳥一家の、ママと私が暮らすこの家には私達のパパの思い出が詰まっているからそこは大事にしたいんだって。

だから、この今まで暮らしてたマンションも私達は引っ越すけど解約はしないんだって言ってた。それぞれの家は今まで自分達で暮らして管理してた訳だから特に問題はない。金銭的な出費は変わらないから問題ない。

私達親子の家はママの仕事用の倉庫。誠パパの家は成人した息子、娘が誰かしら住むだろう的な考えらしい。どっちもマンションの一室だし、私に否はない。

それにしても、話は戻るが、イケメン恐ろしい。

誘拐事件あったの日の夜。

前世でも実は肉好きな私。でも一人で焼肉屋に行く根性もなく一度も行けなかった焼肉食べ放題で完全に浮かれていた。

おかげで鴇お兄ちゃんに抱っこやら手つなぎやらでずっと触られていた私は、白鳥一家の男性陣にすっかり慣らされてしまった。

いや流石にイケメンのあーんは恥ずかし過ぎたけど…そうか、もしかしてショック療法なのかも。

そのショック療法のおかげか何か解らないけど、急に触れられると驚くし色々フラッシュバックして怖くはなるものの、ちゃんと行動が予測できればある程度は震える事がなくなった。

あんなに怖かったのに、なにこれ。イケメン効果なの?それとも、お兄ちゃん達が無害だから、かな?

それともあれか?巷で有名な【ヒロイン補正】って奴?

ほら、そう言う小説で
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